さだまさし「セイヤング21」(2002.12.2、文化放送)


今日のテーマは“ニュース”ということで、多くの皆さんからお葉書をいただきました。そのなかで、これは大久保ひとみさんからのお葉書です。

 11月23日、“風に立つライオン”という本が福岡の不知火書房から出版されました。本の中には宮崎医科大学の柴田紘一郎先生や『八ヶ岳に立つ野ウサギ』のモデル小松道俊先生、鎌田實先生も登場されるそうです。

母が癌で治療を受けていた時、いろいろな不安やもどかしさがとってもたくさんありました。病気と正面から向き合う以前に、違うところで擦り減ってしまうことがあったように思うのです。もちろんお医者さんも看護婦さんも、一生懸命やってくださったし、母も精一杯生きたけれども、今になってみればもっと違った選択肢があったかもしれないという思いがあります。

自分や家族が次に病気になったときに、どんな医療を受けたいのか、また受けたくないのか、何が自分にとって家族にとって大切なのかをきちんと判断できるように、この本をぜひ読んでみたいと思っています。本屋さんに注文して届くのを待っているところです。皆さんもお読みになったらいかがでしょうか。

 

 心ある医療を目指している人たちがね、心ある医療とはいったい何なのだろうかと一所懸命考えた学園祭があったんです。実はぼく、行って来ました。

彼らがね、日本中歩いて心あるお医者さんに会って、「あなたはどんな医療を目指していますか」とインタビューしてまとめてるのね。小さな教室だったんだけど、ずいぶんたくさんの人が来ててね。心の医療というもの、心から医療現場に向かうということがいかに期待されているかということをずいぶん感じましたね。

確かにひどい病院はありますから。かと思うと一所懸命がんばってやっている人もいますからね。だから僕らはちゃんと選んでいかなくてはならないんです。この医者はだめだとか、この医者はすばらしいとかね。自分できちんと見抜いていく。ただそのすばらしい人のところは、なかなかベットが空かなかったりね・・。苦労も多いんだけど、どうにかみんなで手助けして、せっかく一緒に生きて いるんだから・・うまくいかないもんですかね、ほんとに。

僕はね、宮崎医科大学の学生たちと一緒に飲むでしょ? たまたま柴田紘一郎先生とも仲がいいので、一緒に飲むことが多いんですけど、みんな眼がね輝いてるんですよ。キラキラとね。だからこういう人たちがね、やがて別のものを目指し、別の価値観を持ち、この輝いた眼を失ってしまうのかと思うとね・・・。こりゃあ切ないですからね。ずっと眼を輝かせていられるような医療現場を守ってほしいと思います。